市場の猫と猫のサーカス(Moscow, Russia / 2010)
ウラジオストクからモスクワまで、長いようであっという間の電車旅が遂に終わりを迎えた。憧れ続けたシベリア鉄道1番列車、ロシア号は7日間かけて予定通りモスクワに到着した。
予約していたホテルに到着してすぐ、シャワーを浴びた。なにせロシア号にはシャワー室がなく、トイレの小さな手洗い場で何度か頭を洗ったりした程度だった。各車両に備え付けてあるサモワールという巨大給湯器からカップラーメンの容器にお湯を入れ、トイレの水道水と半々にしてぬるま湯を作って体を拭いていた。とはいえ、作家宮脇俊三さんが乗車したソビエト時代のロシア号とは違ってかなり進化を遂げている。各部屋にコンセントも付いていたし、エアコンもあったので、とても快適だった。今では乗車前にロシアのSIMカードでも買って、ネットしながらの旅が一般的になっているのだろう。
2010年当時、このシベリア鉄道旅でデジタルデトックスできたのは、とてもいい経験だった。モスクワに到着して1週間ぶりにネットに接続した瞬間から、また情報の渦の中へと吸い込まれていくようだった。サッカー日本代表監督にザッケローニさんが就任したというニュースを見たが、その頃私はまだサッカーにまるで興味がなかった。「君は8年後、ザックジャパンと共にブラジルワールドカップ日本代表戦を全試合現地観戦するくらいサッカーどっぷりの人生を歩むことになるよ」と教えてあげたい。
イズマイロフスキー市場に行くと、ロシアンブルーが出迎えてくれた。



モスクワに到着したら、本場のバレエを観たいと思っていた。当日券売り場で安いチケットを買って鑑賞した。そしてもう一つ、モスクワといえば猫のサーカス!2010年当時、インターネットで調べてもスケジュールが出て来なかったので、一か八か「ククラチョフ猫劇場」へと足を運んでみた。ところが、ドアは閉まっている。中を覗くとスケジュールが貼ってあり、今日はお休みだと知った。残念!後ろ髪引かれる思いで、劇場を後にした。
時は流れて、2018年のロシアワールドカップ。試合観戦の合間に、遂に猫のサーカスを見ることができた。猫だからすごく上手に芸をするわけではないが、すべてにおいてかわいい、おりこうさんたちがたくさん登場した。
このククラチョフさんの猫サーカス、実は来日公演したことがある。その時、チケットを販売していたのは、私が勤務する会社だった。言われてみれば、営業スタッフが「猫のサーカス!」「猫のサーカス!」と言ってた気がする。あのとき、なぜ日本で見に行かなかったのだろう!



モスクワ、赤の広場にある聖ワシリー教会。ロシアの象徴的建築だ。360度ぐるりと見て歩きながら、シベリア鉄道のゴールを実感した。その夜、ホテルのベッドに横たわると、ベッドがガタンガタンと揺れている感覚があった。トランポリンから降りてすぐうまく歩けないように、7日間のシベリア鉄道旅で感覚が麻痺していた。いつまでも揺れ続けるベッドで眠りについた。
